第118夜「座布団座」(2013年9月27日号)
時折、いやほぼしょっちゅう、些細なウンチクを披露してヒンシュクを買いがちな私ですが、前回最後の東の語源に続いて、今回は西の語源のウンチクを披露しましょう、ただし、ヒンシュクはどうぞご勘弁のほどを・・・。
西の語源は、太陽が往(い)ってしまったという「往にし」が語源だそうです。そういえば、往にし方(へ)という言葉がありますね。日没時に太陽は、その下縁が地平線にかかり始めて2分半から3分強で(緯度と季節によって変わります)で往ってしまうと、本当にそんな感じが判ります。もう往っちゃったよ! ですね。
その後、暗くなった空には、溢れるばかりの星が・・・、とはこの季節はなりません。秋は夜空も寂しいのです。一等星が少ない季節なのです。おまけに、金星だけが夕方の空に頑張っていますが、それも午後7時半頃までで、後は明るい惑星も今年はいなくなります。
そんな中、頭上には二等星ですが4個の星が四角形を作っています。完全な正方形ではなく、台形と言うべきでしょうか。英語でQuadrant of Pegasus、日本語では秋の四辺形と呼ばれ、親しまれています。が、私にはちょっと味気なく感じられるので、座布団座とご案内しています。秋から冬にかけて、肌寒さの中で変光星の観測に忙しい私には、もってこいなのです。使い捨てカイロ座とも言います。
でも使い捨てるだけでは申し訳ないので、それがほぼ天頂(頭の上)にいるときだけ、その北側の辺を地平線まで延長したところに、ほぼ東とほぼ西があると思っていただければ、きっと彼らも本望のことでしょう。
ついでに、四辺形の北東角にあるアンドロメダ座α(アルフェラッツ)とカシオペヤ座のWの西端にあるカシオペヤ座α(シェディールまたはシェダール)を結んで等倍伸ばすと北極星が見つかり、真北が判ります。
結構、座布団も役立ちますよ。これから半年間は、温かくして天体観測に励んでください。
※9月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。