集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第137夜「早起きして金星を見よう」(2014年2月7日号)



 立春を過ぎたとはいえ、まだまだ寒さが続く今日この頃、早起きしようとは大胆なお話です。でも晴れていればの話ですが、絶対損なお話ではありません。ただし、もし毎日続ければ・・・と言う条件が付きますが・・・。

 なにしろ、これから9月の初めまでずぅっとずぅっと早起きを、それも6月初めに至っては3時半前の起床になりますから、起きるだけで大変ですよ。でも、ちょうどその頃は梅雨空が続き、外に出ても無駄かも知れません。損じゃありません、と申し上げたのは、もちろん健康のためですが、もう一つの理由は、「明けの明星」として輝く金星の明るさの変化と奇妙な位置変化を観察できるからです。

 今頃が一番明るく(マイナス4等半)て、月を除く全ての天体を圧倒しています。ですが、これからゆっくりと暗くなっていきます。4月の初め、地球に中接近する火星が、明け方の西空でマイナス1等半まで明るくなりますが、とてもとてもライバルにはほど遠い状況です。

 大接近となる2018年7月末に、火星は今回をはるかに凌ぐマイナス3等近くになりますが、それでも金星の輝きの足元にも及びません。というわけで、金星の輝きは今頃のそれが、天下一品のものなのです。

 もう一つ、これから金星は奇妙な動きをすると申し上げましたが、これも毎朝早起きをしないと見ることができません。それは8月末まで日出1時間前に、毎朝東側の空からUFOみたいに私たちを見下ろしているからです。ただし方向は変わります。2月中旬まで少しずつ南下し、東南東と南東の中間に達しますが、下旬からUターンして、高度を少しずつ下げながら北上します。7月下旬に東北東方向に至って、再びUターン、今度は地平線に向かい急降下、9月になると明け方の空からサヨナラします。

 どうぞ、みなさんの目でそれを確かめてください。すると美の女神ヴィーナス様の妖しい振る舞いに、みなさんはきっとトリコとなることでしょう。

※2月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。