第139夜「星を数えてみよう」(2014年2月21日号)
2月下旬だとはいえ、まだまだ寒さは厳しいですから、地面に寝転がって星を数えてみようと申し上げるのは、いささか常軌を逸している話(日本海側の地方はもちろん、太平洋側でも先週末の大雪がまだ融け残っているところも多い)ですが、一瞬でも結構ですから、真上を見上げてみませんか。でも、首を直角に曲げて見上げようとすると、ちょっとした風でも体が揺らいで、視野も揺らぎ、決して楽ではありません。
自分では真上を見上げているつもりでも、その視線はせいぜい75度方向程度で、90度を見上げてはいないはずです。なので、地面に直接は無理としても、せめて公園のベンチやリクライニング・チェアなどを利用して、真上を見上げてみてください。すると、楽に星を数えることができるはずです。
できれば二等星や三等星、そして四等星までと申し上げたいところですが、とりあえず一等星だけでも結構です。すると、冬の夜空は一等星で溢れかえっていることが判るはずです。おうし座のアルデバラン、ぎょしゃ座のカペラ、ふたご座のポルックス、こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウス、オリオン座のベテルギウス(あればの話ですが・笑)とリゲル、(宵の口に限って)りゅうこつ座のカノープス(南の低空なので三等級程度に減光しています)、しし座のレグルス、夜更けてからはうしかい座のアルクトウルス、おとめ座のスピカなど十本の指全部が必要になります。
さらに今年は木星と火星が紛れ込み、夜空は赤・橙・黄・白・青白の宝石で溢れています。星の語源が炎の「ほ」と白の「し」だという説が、よく判るはずです。去年8月の暑かった夏の夜空を思い出してみてください。惑星はなく、一等星も夏の大三角+α程度で、寂しい限りでしたね。夏の大三角はいずれも白い星ばかりで、何とも味気ないものでした。なぜ、星の色はこうもバラエティに飛んでいるのかなど、お考えいただくだけで、ちょっとした天文学になりますね。
今月下旬は宵空に月明かりが無く、星を楽しみ、科学するのにはもってこい。防寒対策を万全にして一等星の競演をお楽しみください。
※2月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。