集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第140夜「西方浄土とピラミッド」(2014年2月28日号)



 明日は3月1日。桜はまだまだですが、梅の花も咲き始め、そろそろ春の季節。でも日没1時間頃では、オリオン座を始め、冬の星座たちが夜空にまだまだ頑張っています。それは夜半前まで続きます。

 さて、その1日はたまたま新月です。なので、冬の一等星たちが目立つほか、夏の天の川より格段に暗い冬の天の川も、空の綺麗なところなら見えるでしょう。ですが、天の川より少し暗い黄道光は、地平線までくっきりと晴れ上がった場所でも、近年はよほどの場所でないと見られなくなりました。ことによると、光害溢れる日本では、まともな観望はもう無理かも知れません。

 黄道光(こうどうこう:ゾディアカル・ライト)ってご存じですか。私は、真冬の美ヶ原高原と志賀高原(スキーではなくお湯に浸かりに行った)で、今から40数年前の学生時代に、見たことがあります。そのときは、おまけに黄道光よりはるかに暗い、というより肉眼で見ることは当時でも相当困難だった対日照(たいにちしょう:カウンター・グロウまたはゲーゲンシャイン)まで見てしまいました。今やどちらも死語に近い存在です。

 ともかく、あの時の黄道光は綺麗だった。昔のエジプト人がそれをピラミッドの原型にしたという説も、また三蔵法師と孫悟空たちが西方浄土の光と見て、インドまで旅した理由が分かったような気がしたものです。

 日没1時間以上後の西空に、日本ではピラミッドがやや傾きますが、3月のお彼岸前の新月頃が見頃です。空の綺麗なところでは、ピラミッドの先端が地平線に対して直角方向ではなく、やや傾きますが、そのボヤッとした姿はまさしく西方浄土、極楽の光です。

 もちろん正しくは、黄道に沿って分布する原始太陽系物質が、太陽光に照らされて光るものです。でも、ナイル沿岸やサハラ砂漠、チベット高原などで見たら、みなさんはきっとそれを天国や極楽の光と思うにちがいありません。見に行ってみませんか。

※2月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。