第146夜「星座早見盤って便利ですよ」(2014年4月11日号)
私には宝物が一つあります。えっ、それ一つしか無いのですか? そうなのです。それで一生が決められてしまったのですから。
それが星座早見盤です。60年近く大事にしています。家が東京・神田という本屋の町にあったせいで、本には事欠かず、子ども向けの科学書で星座早見盤の存在を知り、雑誌の付録で紙製の星座早見盤を手にしたのがそもそものはじまりでした。神田で天の川を見たのも、それによってでした。
その後小遣いを貯めて、プラスチック製のものを手に入れ、以来大事にしてきたのです。家には神棚がありませんでした(今もない)ので、そこに載せることもなく、もっぱら手元に置いています。本当は、星座早見盤は手元に置いてはいけません。星空が裏返しになるからです。つまり、みなさんよくご存じの通り夜空を見るための道具ですから、頭の真上にかざすべきものです。考えてみれば、そんな利用のしかたをする道具というのも、珍しいものですよね。
でも、これ一つあれば、星座がよく判ってしまうなんて、便利ですよね。都会で見ることができない暗い星しかない星座もバッチリですよ。私はこれで夏の大三角の中にある暗い3つの小さな星座である、や座・こぎつね座・いるか座と、冬の大三角の中にある、やっぱり暗いいっかくじゅう座の存在を知りました。東京ではぎりぎりの低さに見えるカノープスを後に知ったのも、星座早見盤のおかげでした。昼は化石採集、夜は天体観測で、山に行ったときもリュックのお供でした。本当に簡単便利です。
ですが、今週はちょっと役立ちません。今週の主役がどちらも移動する天体、惑星と月だからです。今晩22時頃、西空に木星が、南西空に月が、南南東空に火星が、東南東空に土星が緩いカーブを描いています。18日に東に抜けるまで、14日に火星(翌日地球へ最接近)に、17日と18日に土星に月が接近します。その様子を、星座早見盤を片手にお楽しみください。おっと忘れていました。最近はスマホでも、星空を知ることができますね。
※4月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。