集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第144夜「火星がスピカに接近」(2014年3月28日号)



 夜の9時頃、東南東の空に赤い星と白い星が並んで輝いています。右上にある赤い星が火星で、左にある白い星がおとめ座のスピカです。火星は惑星ですから、毎日少しずつとはいえ移動します。両者の最接近は今月25日でしたが、その日からまだ0.1度も離れ始めていませんから、まだ近いと言えます。

 火星は、おおよそ2年2か月ごとに地球に接近します。いまちょうどその接近中ですので、明るくなっており、一等星スピカよりほぼ2等級明るくなっています。だから、ひときわ赤く明るく見えていますね。そもそも、語源的に赤=明だそうです。もしかすると、赤は火星から来た言葉かも知れません。

 火星から来たというと、かつては火星人襲来!と世界的に大騒ぎされたこともありました。今では、無人ですが地球から探査機が“襲来”する時代になりましたから、火星人にとっては地球人襲来!ですね。残念ながら火星人はいないので、大騒ぎする人はいませんが・・・。

 ところで、1996年に火星からの生命体か?と言われ、大きな話題になったALH84001と呼ばれる火星から来た隕石は、35億年前に火星で造られた岩石で、今から1600万年も前に火星に衝突した彗星か小惑星が火星深部から掘り起こし、弾き飛ばして、1万3000年前に地球に落下したものだそうです。その中に、(まだ結論が出ていませんが)生命体の痕跡らしきものが含まれていたのですが、そんな長期間、宇宙放射線に曝されていたとすると、化石かも知れないとはいえロマンですね。

 ですが、今知られざる大きな問題となっているのが、地球から盛んに打ち上げられている探査機による地球生命の宇宙汚染です。探査機には宇宙検疫が義務付けられていますが、高温に弱い電子部品が多いので、滅菌と呼ばれる完全な殺菌ができないのです。アポロ宇宙船によって月に微生物が運ばれ、それが地球に持ち帰られ見つかったこともあります。何事も人間中心に考えてはいけないのでしょうね。政治も経済も哲学も科学も・・・。

※3月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。