第147夜「明るい火星」(2014年4月18日号)
18~20日なら19時20分頃、南西空にいるおおいぬ座の白いシリウスと、南東空にいる赤い惑星の火星を御覧ください。色が全く違いますね。ですが、明るさはボチボチでしょう。共に-1等です。高度が30度を切っていますので、大気による吸収を大きく受けて、原則として光度比較は避けるべきなのですが、堅いことは言わずに比べてみてください。できれば数日連続観測を。
今、火星が地球の近くにいます。と、申し上げても地球・太陽間の0.62倍、つまり約9000万kmも離れていますが、それでも時には地球・太陽間の2.5倍(3億8000万km)も離れてしまうのに比べれば、ごく近所です。
地球の一年は1年ですが、火星の一年は地球の1.8年です。なので、火星は地球に2.2年ごとに近づきます。火星や地球が陸上競技場のトラックを走っているとすれば、本当は内側を回る地球が火星を追い抜くので、地球が火星に近づくと申し上げるのが正解ですが、ともかく現在、地球と火星が激しく競り合っているところなのです。
だから、火星は明るく見えるわけです。ただし、火星が赤く見えるのは、抜かれまいと顔を真っ赤にしているわけではありません。もともと錆びた鉄分が地表(正確には火表)を覆っているからです。錆びた鉄があると言うことは、簡単に言えば、昔鉄を錆びさせたものがあったと言うことですね。
火=戦から、多くの古代の人々は、火星を戦いの神様に見ました。特にカルデア(メソポタミア)やギリシャ、あるいはヒンドゥ(インド)では、軍神への信仰は絶対だったようです。北欧や日本でもそうでした。地方によっては、病気や災いをもたらすとも言われていました。良いイメージはなかったわけです。
ところが、古代ローマではマルス神と呼ばれ、本来的に春の女神でかつ農業の女神でした。英語の三月(マーズ)の語源はここにあります。今年の火星は、確かに春らしいイメージの女神様ですね。
※4月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。