集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第150夜「望遠鏡」(2014年5月9日号)



 突然ですが、みなさんに告白します。今を去る50数年前、私たち3人の中学生(悪ガキとも)は、夕方母校の理科室に忍び込んで望遠鏡を校舎屋上に持ち出し、土星を観望しました。これがホントウの盗み見です。もちろん先生に見つかるまいとヒヤヒヤモノでしたが、今でも良い思い出になっています。

 私にとっては、その経験と、実家近くの肉屋のお兄さんに初めて望遠鏡を覗かせてもらって、同じ土星を見たことが私の一生を決めることにもなりました。今の我が家にも望遠鏡があります。以前は妻と息子娘合計5人にも見せていましたが、子供たちの独立と共に、今は書斎コーナーに鎮座しています。毎晩の天体観測は双眼鏡のみが出番です。

 さて、その望遠鏡、天文家にとってなくてはならないもの。というより、近代科学はこれと顕微鏡によってスタートしたと言われるほどの重要な武器。今週はこれについてちょっとお話したいと思います。

 望遠鏡(テレスコープ)の命名者は、望遠鏡発明者リッペルスハイ(他にもいる)でも望遠鏡で初めて天体を見た人ガリレオ(これも他にもいる)でもなく、ガリレオの友人チェシという人です。また、顕微鏡(ミクロスコープ)も、やはりガリレオの友人ファーベルという人です。

 日本語名の顕微鏡は江戸時代の植物学者宇田川榕菴という人ですが、望遠鏡の方はよく判っていません。大体、日本語では暫くの間、望遠鏡とは呼ばれずに、遠鏡(エンキョウ)、凹面対照鏡儀、眼鏡(ガンキョウ)、観星鏡、窺天鏡(キテンキョウ)、窺筒眼鏡、曲折鏡、景鏡、写影鏡、星鏡(セイキョウまたはホシカガミ)、千里鏡、地球望遠鏡、テリスコッペン鏡、遠眼鏡(トオメガネ)、ナハトケークル(夜間望遠鏡)、万里鏡、望鏡、星目金(ホシメガネ)でした。以上は私のコレクションです。また、ガリレオ式正立望遠鏡を二枚玉遠鏡、ケプラー式倒立望遠鏡(ふつうの天体望遠鏡)を二枚玉逆鏡とも言いました。望遠鏡は地球望遠鏡の略称なのかも知れませんね。

 読者の皆さんと関係者の皆さんに、150号までこれたことを、深く感謝いたします。

※5月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。