集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第151夜「春の大曲線を見よう」(2014年5月16日号)



 5月半ばを過ぎると、青葉若葉の初夏を感じる爽やかな季節になります。夜空に青葉若葉はありませんが、春の大曲線や夏の大三角、秋の大四角、冬の大三角はありますよ。

 春の大曲線は、あの有名な北斗七星が出発点です。柄杓(ひしゃく)型、といっても最近のお子さんは柄杓を知りません。だから最近の私は、フランスで言うミルク・パン(なべ)やフライパンをご紹介しています。星のニックネームも現代化する必要がありますね。

 フライパンの曲がった柄を、曲がったまま南に延長していくと、一つ明るいオレンジ色の星に出会います。うしかい座の1等星、というより0等星のアルクトウルスです。日本語名は麦星が有名です。もうしばらくすると、デパートの屋上に開店するビヤガーデン。そこで仲間とわいわいやった後、ヒョイと見上げると、今飲んだビールの色とそっくりなビール星が見えますよ。

 麦星よりビール星はいかがですか。でも、ちょっと飲み過ぎてこの星が赤く見え始めたら、パーティーはお仕舞いにしましょう。二個や三個に見え始めたら、もうアウトです。

 さらにカーブを南に延長すると、今度は全然違う色の1等星の真珠星が見つかります。正式な外国名は、おとめ座のスピカ(尖った麦の穂)ですが、和名の真珠星の方が日本人にはぴったりですね。

 でもスピカについては、尖ったものと言う意味から、野球やサッカーの靴の裏側に付いているスパイクや、お料理のスパイスの語源になっていますと、ビヤガーデンでお仲間にお話すると、みなさんの株はガガガと鰻登りになること間違いなし。北斗七星~麦星~真珠星のことを恩師鈴木敬信先生は春の大曲線と言いました。だから夏の大三角(Summer Triangle)などのような英語名はありません。でも私は、ちょうどその南に南十字星が位置する(本州では見えない)ことで有名な、からす座を見つけるために、それを延長しました。

 ぜひ、春の大曲線をご覧ください。

※5月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。