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あつぼし見上げて夜話

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第156夜「夏至ですよ」(2014年6月20日号)



 昨年、講師をさせてもらっている東京のカルチャーセンターで、私が「夏至はいつだかご存じですか」と質問したところ、「暑くなる8月だったかしら」との答がありました。びっくりしましたが、一般の方にとっては祝日になっている春分や秋分よりもマイナーなのですね。

 今年は6月21日がその日です。今年は、と限定したのには理由があります。年によって日が変わるからです。例えば最近では、2003年と2007年と2011年には、夏至は22日になりましたが、その他の年は21日でした。もちろん8月のではなく、6月のです。

 決して暑くなるから夏至なのではなく、太陽が空で一番北の地点(夏至点という)に達するのが夏至です。一番北によると、北半球では地平線上に上っている時間が長くなります。だから、日照時間が長くなって、本来なら地面から放射される赤外線で大気が温まり、暑くなるのですが、地面も大気も十分に温まるには時間がかかるため、最高気温に達する時期が遅れるのです。

 そもそも日本語の夏至は、夏に昼の長さが至(きわま)ることだとも言われています。英語の夏至はSummer Solsticeと言いますが、Solsticeはラテン語のSol(太陽)とsistere(じっとそのままでいる=それ以上北に行かない)から来た言葉だと言われます。同様に英語の冬至Winter SolsticeのSolsticeも(じっとそのままでいる=それ以上南に行かない)から来ています。

 古代人にとっては、太陽が南に行ってしまうことは恐怖の的でした。寒くなるからですね。だから、日本や中国では冬至が正月とされたこともありますし、古代ローマで太陽の神(の復活)を祝う日とされました。弾圧されていたキリスト教徒は、それに便乗してキリストの誕生を祝うようにクリスマスを決めたと言われています。当時の冬至が12月25日だったからです。そして、夏至の日は、キリストを洗礼した聖ヨハネの祝日になりました。

※6月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。