集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第157夜「真珠星2」(2014年6月27日号)



 今は梅雨の真っ盛り。ですからたぶん今晩も綺麗な星空は望めないでしょう。でも、今晩は新月ですから、月明かりは全くなく、もしもあなたのお住まい地域が、奇跡的に快晴になったら、短い夏の夜ですが、嫌なことは忘却の彼方に放り投げて、心ゆくまで星空に浸るのはいかがですか。

 中でも、宵空観望がオススメです。北の空には北斗七星、天頂には麦星(うしかい座のアルクトウルス)、東空には牽牛と織女、南西空には4月に地球に近づいた火星、南東空には土星とさそり座の赤星(アンタレス)などなど、肉眼で気軽に見ることができる明るい星々がたくさんあるからです。

 うっかり忘れるところでした。もう一つ、一等星がありました。今頃火星と土星に挟まれた位置にある、おとめ座の白い一等星の「真珠星」です。ステキな名前でしょう。西洋ではスピカという有名な星ですが、真珠星、これは日本独特の名称です。きっと日本が真珠の生産国だからでしょうね。もちろんパールと呼ばれるように、日本の特産品ではないでしょうが、真珠星は間違いなく日本特産です。

 真珠は6月の誕生石です。1月ガーネット、2月紫水晶、3月アクアマリン、4月ダイヤモンド、5月エメラルド、7月ルビー、8月メノウ、9月サファイア、10月オパール、11月トパーズ、12月ジルコンなどなど。列挙してみると、ケフェウス座ミュー星がガーネット星、織女星(ベガ)が真夏のダイヤモンド、みなみじゅうじ座ガンマ星がルビディアなど、宝石になぞらえた名前が付けられています。夜空に色の似た星が光っているのですね。

 でも、なぜ誕生石と言われるのでしょう。ものの本には、旧約聖書にあるイスラエルの十二部族が有していた石によるとか、カルデア人が選んだ黄道十二宮に割当てられた石だとか、いろいろ記されています。でも、実際に星空にあるのはたった三つだけ。それも色が似ているというだけですよ。少なくとも日本人には関係なさそうですね。

※6月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。