集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

目次

第159夜「火星がスピカに接近②」(2014年7月11日号)



 台風8号が日本列島を縦断中です。被害が出ないことを祈ります。そして、梅雨明けも間近ですね。14日は満月。お月見なら別ですが、星を見るにはオススメできません。もちろん決まった星の観測がある方なら、これまた別ですが、特にない方なら、お休みして体力を温存なさった方がよいかも知れません。ですが今日からしばらくは、またまた別です。なぜかは、暗くなって南の空を見れば、たちどころに判るでしょう。火星とスピカが接近しているからです。

 実は第144夜でも、火星・スピカ接近はご紹介しました。今年は2月5日と3月25日、そして7月14日(黄経の合。赤経の合は13日)に、火星がいずれもスピカの北を通過します。でも、そのうち今回のものが一番近づき、離角はたったの1.3度。腕を伸ばして指も伸ばしたときの、指一本ぎりぎりに隠れる程度の角度です。チョー接近と言うほどではありませんが、赤と白の色違いはとても目立ちますね。

 ところで、今回お話したいことは、なぜこの半年間で3回も二星が接近を繰り返すかです。惑星は、太陽の周りを一方方向、太陽系の北側から見ると反時計回りに公転しています。そして、内側の惑星ほど速く公転しています。そのため、今年4月14日に地球が火星に最接近し、追い越します。

 ですが、私たち地球人は、地球が動いているようには感じません。このため、遠くにある恒星に対して、普段は日ごとに西から東へと動いている(順行)惑星が、東から西に動くようになり(逆行)、地球に追い抜かれ(このとき最接近)、しばらくすると、再び西から東へと動く(順行)ように見えるのです。

 その軌跡はループを描くことが多く、いろいろなパターンになります。地球軌道に対して火星軌道が傾いていることも、パターンの相違に関係しています。天動説時代の人々にとっては、これが大きな謎でした。だから、占星術が支持されたのですね。

 9月28日夕方には、火星がさそり座のアンタレスに接近します。おたのしみに!

※7月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。