第161夜「スーパーアース」(2014年7月25日号)
全国各地は次々に梅雨が明けて、いよいよ暑い夏がやってきました。宵空にも夏がやってきて、東空に夏の大三角が高く上ってきました。その中で、一番明るいベガが織女星、二番目アルタイルが牽牛星と来れば、七夕のお祭りが待ち遠しいですね。
今年の本当の七夕は、8月2日です。その日には半月が南の空にいて、天の川(都会では見えませんが)の中にいます。すると、月が何となく船に見えますね。平安時代の人々は、それを仲良し二人が乗る船に見ました。
二日の晩には、月の船の東に真珠色の星が見えますよ。おとめ座のスピカですが、和名の真珠星がぴったりです。彦星が織り姫に贈った指輪の真珠でしょう。でも、ベガのことを外国では真夏のダイヤモンドと言いますから、真珠よりはダイヤモンドの方が織り姫さんは喜ぶでしょうか。ロマンチックですね!
さて、今回はもうちょっと現代的宇宙的ロマンチックを味わっていただこうと思います。6日の晩、かなりふとった月の南側に、赤い1等星が見えるはずです。さそり座の赤色超巨星アンタレスです。それとベガを結ぶ直線で、ベガから1/3のところに、2等星の赤っぽい色の星ラスアルハゲがあります。
その星はへびつかい座の最輝星で、へびつかい座の中にグリーゼ1214bという味も素っ気もない名前の星があります。問題は、この星が、太陽より低温で軽い赤色矮星の周りを巡る惑星だということです。そして、この星が大量に水蒸気の大気を持つらしいことが、2012年に判明しました。しかも、地球と良く似た軽くて比較的低温(200℃)の岩石惑星で、生まれたときには主星からかなり離れていて低温でしたが、その後主星に近づいてくる間に地球とほぼ似た環境になったようです。ただ、現在はもっと近づき過ぎたため、ずっと暑くなってしまったようで、残念ながら生命はいそうもありません。
現代は、こんなことまで天文学で知ることが出来ます。伝統的な七夕のお祭りもロマンチックですが、生命がいそうな惑星を探すことのできる最新の天文学の世界も、また、とてもロマンチックですよね!
※7月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。