集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第164夜「太陽のお父さんとお母さん」(2014年8月15日号)



 我が家の前に、ちょっとした公園があります。樹木溢れる緑豊かなところです。先生に連れられた幼稚園児や保育園児が仲良くはねまわっている光景や、ご両親に連れられた子供たちがサッカーやバドミントンに興じている姿をよく見かけます。

 私は6歳で母を、16歳で父を亡くしましたが、人には誰にも産んでくれた両親がいます。犬や猫にもいます。木や花にもいます。地球や月にも、太陽という親がいます。太陽が生まれた後に、太陽が集めてくれた材料から地球や月が生まれました。

 では、太陽は誰が産んだのでしょう。そして一人っ子で生まれたのでしょうか? みなさんはそんなことを考えたことがありますか?

 今頃の明け方4時といえば、そろそろ朝の黎明が東の空から見え始める頃ですが、東の空にすばるやヒアデス星団、そしてオリオンの三つ星が上っています。実はそれらは、それぞれのグループ内で、ほぼ同時に誕生したと考えられています。

 恒星というのは、単独つまり一人っ子で生まれることはなく、たいていはごそっとまとまって生まれてきたと考えられています。つまり双子、三つ子程度ではなく、十つ子、二十つ子が当たり前なのです。太陽が生まれてからすでに50億年は経過しているようですから、もうすでに兄弟姉妹バラバラ状態ですが、宇宙のどこかに何星かは、兄弟姉妹がいるはずです。夜空で探し当ててみたいものですね。

 昨年末にヨーロッパ宇宙機関の2機の赤外線探査機スピッツァーとハーシェルが、300以上の銀河団の調査をしたところ、所属する銀河が、今から90億年前に急に星形成をやめたということが判りました。これは重要な意味を持っています。太陽が生まれる前にいくつもその先祖がいたことを意味しているからです。既に太陽の体内に星の爆発でしか生まれないはずの重元素が見つかってはいましたが、それが確認されたことになります。確かに宇宙は生きているのですね。

※8月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。