第163夜「今年のスーパームーン」(2014年8月8日号)
仏教のお寺さんや檀家さんなら、大切な時期になってきました。そのようなお家なら、そろそろお盆の時期ですから。お住まいの地域によって異なりますが、だいたい今日8日が本当の、つまり旧暦七月十三日の迎え盆、11日が十六日の送り盆だからです。
私の生家は檀家でしたから、入口前で迎え盆の日に迎え火を、送り盆の前日に送り火を焚いて先祖の霊を家の中に迎えたものです。
ところで、どうしてこの頃ご先祖様が、ご自分たちがかつて生活した家に戻るのでしょう。もう少し天文的に申し上げると、無事に戻れるのでしょう。仏教的にはいろいろ意味があるようですから、詳細はお寺さんにお聞きいただくこととして、天文的には10日から11日にかけての夜中、上を見上げていただけばすぐわかります。
暗い星をほとんど消してしまう満月が輝いていますね。なにしろ一晩中盆踊りが出来るほどのりっぱな満月です。だから、ご先祖様たちは安全にお家に戻ってこられるのです。そして、あっ! あそこが懐かしい我が家だ! と上空から発見できるのです。旧暦七月七日すなわち七夕に高い竹に短冊をぶら下げる理由がお判りになったことでしょう。
そうです、目印だったのです。だから、昔は短冊にご自宅が判るように、魚屋さんなら魚の絵を、八百屋さんなら野菜の絵を描いたのです。ただ長期間飾っておくのは目障りだと思ったのか、翌八日の朝にはサッサと片付けられ、川に流されました。それ以後は月明かりが案内してくれますから。なんだ、笹飾りは織り姫彦星様の為ではないのか? ですね。
さて、今年の盆の月(11日未明の満月)は、ことさら大きく感じませんか。実は、最近流行って使われているスーパームーン(その年に12回か13回ある満月の中で最も大きく見えるもの)なのです。今年一番地球から離れて小さく見えた1月16日の満月より14%も大きくなっています。その分、明るくなっているので、もっと安全かも知れませんね。
※8月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。