集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第166夜「夜の背骨」(2014年8月29日号)



 夜の到来が早くなりました。私が住んでいる東京では、夜の8時前には真っ暗になり・・・、というのは違って、都市光が原因でそうはならず、少なくともこれ以上暗くなりません。だから、もちろん天の川は見えません。東京ではこの42年間で天の川が消滅しました。みなさんお住まいの地域ではいかがですか。

 土星と火星が南西の空にまだ見えているその8時頃、さそり座の尻尾(日本では釣り針の先)を作る数個の二等星が、南の低空に見えています。天の川が見える地域なら、そこから天頂やや東方向に向けて、天の川が立ち上がります。そして、北北東の地平線方向に立ち下がります。

 頭上高くにある夏の大三角を貫いて、夏の天の川はとうとうと流れているように見えます。山が多い日本なら、天の川は当然「川」ですよね。お隣の中国でも「川」と見ています。特に牽牛織女伝説発祥の地となった黄河流域では、漢水・銀漢・銀河などと呼ばれ、インドでは空のガンジス、メソポタミアでは空のユーフラテスと呼ばれました。

 ところが、世界では「道」という見方が一般的らしく、キリスト教社会やアメリカ原住民達は聖者の道として捉え、遊牧民族も道と見ています。特に後者の人々にとっては、「道」は生きるすべですよね。その流れから、自らの進むべき方向を見つけていたのかもしれません。

 ところが、カラハリ砂漠に住むブッシュマンの人々は、天の川のことを「夜の背骨」と呼びました。とてもおもしろい見方ですね。天の川が夜空を支えていると考えたからだそうです。今夜のそれは、まさしくそんな見え方ですよ。

 もちろん皆さんご存じの通り、天の川は川でも道でも背骨でもありません。無数の小さな星の集合体だといった最初の人は、ギリシャのデモクリトス(前460~前370)です。一応、星の雲と呼びましたが、望遠鏡や双眼鏡がない時代のことですから、凄い想像力ですね。ぜひ今晩天の川をご覧下さい。

※8月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。