第182夜「オリオン大星雲②」(2014年12月24日号)
冬至(今年は22日)が過ぎて、これから夜が短く、昼が長くなっていきます。ですが、日没が最も早かった今月6日頃に比べると、それはもう3分ほど遅くなってきました。日出の方は、これからもっと遅くなり、一番遅い1月8日頃には、今日より約5分も遅くなります。
実は毎年「初日の出」頃の日出は、年間で最も日出が遅い頃になっています。お正月、日没がはっきりと遅くなってきたのと、日照時間がほんの少し伸びてきたことを感じると、なんとなく春が近づいているような錯覚に陥りますが、まだ、日出が遅くなることと、大気の温もり方は少し遅れることから、立春を過ぎる頃まで春はやってきません。そのことが理由で、旧暦を使っていた昔の人は、正月を立春前後(今の2月)にしていたことが身にしみて分かります。
さて、今年は偶然冬至の日が新月でした。だから、今晩も月明かりはほぼ一晩中ありません。晴れていれば暗夜にオリオン大星雲がはっきりと見えるはずです。昔の日本でオリオン座を布団と見て、その中でオネショのシミみたいに見たことから、三人の子どもがお母さんに怒られて、お日様に向けてそれを背負っているという話があることは、135夜でご紹介しました。
ともかくオリオン大星雲はみなさんに親しまれています。でも、天文学者にも親しまれ、そこまでの距離が1350±3光年、広がりは10光年、平均温度が9200度、銀河系のオリオン腕内にあって、名前の通り銀河系内で最大規模のガス星雲であることや、有名なトラペジウムがある中心付近は、太陽系周辺の2万倍もの密度があること、今から400万年前に星が誕生し始め、30万年前に誕生のピークを迎えたこと等が判っています。
今もまだ活発に星を生産し続けていますが、今から数千万年後には大星雲は、はかなく消滅するそうです。寂しいことですね。それまでみなさん、どうぞ何回でも大星雲を見てあげてください。
※システムの不都合でNo182・12月19日号が正しく掲載されませんでした。内容を少し修正してNo182・12月24日号として掲載いたします。読者のみなさん、筆者の金井三男さんにお詫びいたします(係)。
※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。