集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第185夜「ジャイアント・インパクト」(2015年1月9日号)



 今年も始まってから一週間が経ちました。時が逆に流れたら、面白いかどうかは判りませんが、実際にはそんなことが起こりません。でも、私たちは叡智でもってそれを科学的に知ることが出来ます。

 今晩(九日夜)午後9時過ぎに、東の空をご覧ください。十日の夜なら午後10時過ぎが良いでしょう。満月過ぎで上側(西側)が欠けた月が上ってきます。

 その月は、9日夜なら地球から40万5300km、10日夜なら40万5000kmの距離にあります。ちなみに8日夜が40万4600kmでしたから、9日夜が一番遠いことになりますね。去年8月11日の月は新聞でスーパームーンと大騒ぎされたことは覚えておられますか? 月が大きく見えたからですが、それは地球に近かったからですね。同日夜9時の距離が35万7000kmでした。

 このように月までの距離が、およそ35.7万kmから40.5万kmまでかなり変化するのは、その公転軌道が楕円で、地球が楕円の焦点近くにあるからですが、この楕円軌道のサイズそのものが段々大きくなっていることも、みなさんはご存じのことと思います。年間で約3.8cmずつ増えているそうです。

 人によって違いますが、大人の男性なら指2本、女性なら3本分相当ですね。そんな僅かな量でも現在では判るようになったこと自体凄いことですが、ともかく昔、月は地球に近かったのです。そればかりでなく、今から45.3億年前、火星ほどのサイズの天体(テイアという名前があります)が、原始地球に衝突(ジャイアント・インパクト)して噴出した多くの破片が、地球を一時的に取り巻いて環となり、それらがたった1か月で集合して、月が誕生したというシナリオが今では定説になっているのです。

 みなさんが月をご覧になって、ただキレイだなと思うだけでなく、ぜひ科学的叡智で月の誕生まで探っていただけると、本文を書かせていただいている筆者としては、喜びがジャイアントに溢れてくるのです。

※1月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。