集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第183夜「OBAFGKM」(2014年12月26日号)



 天文学者の念仏、もとい、夜空に輝く恒星のスペクトル型です。恒星から放たれる光を調べると、表面温度や構成物質その他多数の物理量(特徴)が判るので、現代の天文学者にとっては必需品です。例えばぎょしゃ座のカペラはG型、オリオン座のベテルギウスはM型、おおいぬ座のシリウスはA型です。太陽はカペラと同じG型といった具合です。

 ですが、天文学者は主として表面温度で分類されているその順番を覚えるのが大変でした。前世紀の初め、米国ハーバード大学でピッカリング天文台長や恒星分類の実務を担っていたキャノン女史らが、スペクトルの単純そうなもの→複雑そうなものへと順番にABCと振っていたのですが、後に表面温度と対応していることが判って、高温→低温に並べ替えた結果、訳が分からなくなったのです。

 そこでたくさんの天文学者が寄って集って(たかってと読む)記憶法を考案しました。以下、筆者のコレクションをご紹介します。
 ① Only Boys Accepting Feminism Get Kissed Meaningfully.
 ② Oh!! Be A Fine Girl Kiss Me, Right Now. Smack!
 ③ 下線部のみSweet Heart.
 ④ Oh! Be A Fine Girl(Guy, Gay),Kiss Me, Let’s Try!
 ⑤ O, Beatiful And Fair Girl, Kiss Me Right Now, Soon!
 ⑥ Oh! Beautiful And Fine Girl, Kiss Me!
 ⑦ Oh! Be A Fine Guy, Kiss Me!

①と②がハーバード天文台式、③が米国ヤーキス天文台式、④が福江純式、⑤がH.N.Russell式、⑥と⑦は亜流。どうです、種々あって天文学者の苦労が偲ばれますね。

 筆者の先輩に当たる元五島プラネタリウム解説者の草下英明氏は、OBAFGKMのみでオバフグカムを提案されました。最近ネットではお婆河豚噛む(おばあフグかむ)だそうです。筆者も負けずに考案しました。
 Wa! Omae Bakaka Ahoka Fontoni Gakkuri Kichauyo.
 Mah Nantoka Rakudai Sinaiyouni! Cuso!
ただし相当下品なので、お勧めはしません

※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。