集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第187夜「あの織り姫星が・・・」(2015年1月23日号)



 先週の続きです。計算上は夕方6時でも北西地平線上に見えていることになりますが、事実上、ベガ(織り姫星)は建物や山などに隠されていることでしょう。でも、明け方明るくなりつつある6時頃では、東北東の空40度以上の高さから、私たちを見下ろしています。

 6月や7月は、夕方から明け方まで晴れていれば見ることができますが、その代わり夜が短いので、見える時間も短いですね。夜が長い冬は、そもそも織り姫星が出ている時間が短いというわけで、よく知られている割には、注目度が低いと言うことになります。

 それに引き替え、秋から冬の星座ぎょしゃ座のカペラなどは、日没直後から日出前まで13時間以上見えることがありますが、知名度が低いのは一体何故なのでしょうか? やはり、織り姫様が七夕の主役だからなのでしょうね。

 さて、このベガが、今から約1万2000年後、筆者の計算では西暦1万3957年には、地球の自転軸の北極方向(天の北極と言います)に、僅か8度33分4秒まで近づき、事実上この時代の北極星になるはずで、当然日本では一晩中見える星(周極星)になります。当然一年中の毎夜何時の時刻でも見えているはずです。

 実は、紀元前1万2371年(これも筆者の計算による)には、もっと近づいていました。その値は0度35分31秒で、現在の北極星の0度40分19秒より天の北極に近かったことになります。そういえば、北極星(天帝)は織り姫星のお父さんでしたよ!なんだか不思議な縁を感じませんか?

 ともかく、この現象は主として太陽と月が(そのほかにも金星や木星など強力な惑星も)地球を引っ張って起こる歳差という現象によります。もちろん占星術などによるものでなく、りっぱな科学計算に基づくものです。ダイナミックですね。

 20日が新月でしたから、ここ数日、月があるのは宵の口だけ。暗い夜空に思いっきり浸ってみませんか。寒いけれど・・・。

※1月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。