集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第189夜「2022年の木星は大きいですよ」(2015年2月6日号)



 満月を過ぎましたが、宵空には月の影響が大きく残っています。なので、飲み屋さんは花盛り、ということもありませんが、寒い季節ですからついついですね。でも、ちょっとそこ(飲み屋さん)で、こんな話題はいかがでしょう。真面目すぎて酔っぱらえないか。

 6日の宵空に、月のすぐ上に月明かりにめげず頑張っている星がいますね。先週もお話した木星です。なにしろ金星に次いで明るく輝く星ですから、頑張れます。でも来年は、そうは行きませんよ。僅かですが、今年より暗くなるからです。今年の最大光度-2.6等に対して、来年の最大光度は-2.5等で、この6年間では最も暗い最大光度です。

 最大光度というのは、およそ1年間で最も明るくなる時の明るさのことで、地球が木星に最接近する時の明るさのことでもあります。地球の方が速く太陽の周りを公転していますから、いわば陸上競技場の内側のトラックで追い越すようなもの。

 だったら毎年追い越すときに同じ明るさになっても良さそうですが、そうは問屋が卸さない。実は木星や地球の軌道が楕円軌道で、しかも互いに軌道が傾いているため、距離が同じにはなりません。すると、地球から見たときの木星の大きさが異なり、そのため明るさが違うようになるのです。

 実は再来年が最も距離が離れるため、再来年の木星の見かけの直径に対して、今年のそれは2.5%も大きく、明るさも0.1等明るいのです。

 ところが、上には上があり、実に2022年9月には12.7%も大きくなり、0.4等も明るくなります。近年中では最も大きな木星になります。歴史的には1951年以来の近さで、同年10月3日の距離3.94872天文単位(地球太陽間平均距離)に対して2022年9月26日のそれは3.95260ですから、あいにく僅かに及びません。でも超久しぶりの大接近ですから、望遠鏡でぜひご覧ください。肉眼では残念ながらわかりませんが。。。

※2月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。