集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第192夜「月に行きたいですか?」(2015年2月27日号)



 冬の星座の、というより88星座中のチャンピオンは、つまりみなさん誰もがご存じの星座は、なんと言ってもオリオン座ですね。日本では鼓(つづみ)星という、形が鼓そっくりの名前がありますが、これもなんと言っても、右手で棍棒を振り上げ、勇壮に牡牛と戦う勇者オリオンの姿には、思わず「カッコイイ!」のかけ声が掛かりそうです。

 でも今晩は、棍棒ではなくバットと見て、月をボールと見ると、右バッターの持つそれにちょうどボールがヒットし変形した形に見えています。ただし、明晩になると、月は東に行ってしまいますから、ボールはチップした程度なのかも知れません。

 ところで、今から45年と半年前、アームストロング船長とオルドリン宇宙飛行士が月面を歩いたことはご存じですか。そんな前のことですから、若い人はその日の光景は映像でしかご存じないことでしょう。

 私は、当時新米教師だったので、尾瀬の林間学校で中学生たちと望遠鏡で見上げていました。お互い近くに位置していた木星と月をです。あそこで人が歩いているんだと、まじまじとその人類史上最大(と思っています)の出来事を見ていたのです。

 ですが、最近、意外なことを私は知りました。それは、実に幸運だったと言うことです。1968年~69年は太陽活動が11年周期の極大期で、太陽フレア発生のピークだったのです。それによってアポロ宇宙船に太陽からの放射線が直撃していたら、電子機器が壊れるばかりでなく、宇宙飛行士の身体も強烈なダメージを受けたかも知れません。

 8号~17号までのアポロ宇宙船の打上がフレア発生のタイミングとずれていたのが幸運だったのです。宇宙旅行時代と言われ、大手旅行社でも宇宙体験飛行の切符が予約販売され始めた最近、ブームに水を差すわけではありませんが、いろいろなことを考える必要がありそうですね。ただ、救いは最近太陽活動が低調になり始めたらしいことでしょうか。

※2月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。