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あつぼし見上げて夜話

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第196夜「昼夜平分と日の切れ目」(2015年3月27日号)



 昼間の長さが12時間を超えました。巷では春分の日が昼夜平分、つまり昼間12時間、夜間12時間と言われます。これは誤っています。日本国内では地域(主として緯度)によって違いますが、例えば東京では例年3月17日頃が昼夜平分になります。春分の日では、昼間の長さが12時間7分ほどになります。

 春分や秋分の日に昼夜平分にならない主な原因は、①日出没が太陽の中心が地平線にかかる瞬間ではなく、どちらも太陽の一番上が出没する時であること、②地球大気によって太陽が実際より浮き上がって見えること(大気差)などです。

 難しいことはさておき、色々議論があるところで、時代によっても違い、また天文学者と一般市民の習慣の違いもあったようですが、昔の日本では一般に日没が日の切れ目、つまり日付が変わる時と意識されていたようです。  

 例えば中世日本の人々は、昼と夜とを別の世界と見立て、その境界に重大な意味を認める感覚を持っていました。つまり、夜明けから日暮れまでの昼間は、人間の世俗世界だったのです。

 一方日暮れから夜明けまでの夜間は、不可思議な能力を持つ神と物怪(もののけ)が支配する世界でした。だから、神社祭礼に宵祭り(宵宮・小祭・夜宮)や宵山など夕方から始まるものが多かったのです。すなわち、宵の内に神々が来臨すると考えられました。従って一日もその瞬間に始まると考えられたのです。

 黄昏時(たそがれどき:誰彼時とも:第190夜参照)が、別名大禍時(おおまがどき:災いが訪れる時)とも言われる理由が、そこにあります。それは逢魔時とも書かれます。魔物に出会う時と言う意味です。夜の訪れは多くの人々を緊張させました。あんなに明るかった昼間がどんどん暗くなっていくのは、普通なら誰でも不安になりますよね。

 でも、星がお好きなみなさんなら、これぞ時来たる!ですね。

※3月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。