集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第197夜「宵の明星金星の話」(2015年4月3日号)



 いよいよ春めいた今日この頃、宵の西空には宵の明星金星が、その明るさを増し始めています。ただし最も明るくなるのはまだ3か月も先のことで、7月半ばになります。でも、その金色の輝きは春らしいですね。

 みなさん良くご承知のように、金星には宵の明星と明けの明星の二つの名前があります。太陽より東にあって日没後取り残されて見える方が前者、同じく西にあって日出前先駆ける方が後者ですが、ややこしいのが見える方角。前者は西空に、後者は東空に見えます。ですが、金星が南や北の空に見えることは絶対にありません。

 さて、金星の名前のウンチクをもう少しお話しますと、欧米では宵の明星をヴィーナスと言います。あの美の女神様の名前です。もちろん金星が美しすぎることによりますが、金星の天文学的記号♀(生物学のメスの記号でもある)は、美女神の美貌を鏡に映したものだそうです。手鏡の形をしていますね。

 一方、明けの明星はルシファーと呼ばれます。光または輝き(Lux)の連結形Luciと、もたらす(ferre)の合成語だそうで、これも明るく美しいことを意味しているのでしょうね。でも、その二つが同じ金星であることを、史上初めて見破った人は、かの有名な数学者ピタゴラスさんだそうです。

 古代中国語では、金星のことを色々呼んでいます。例えば史記の天官書には、夕方見える金星を、太陽近くにある場合は太白、離れたところにある場合は大相(たいしょう)と呼び、明け方見える金星を、太陽近くにある場合は明星(みょうじょう)、離れたところにある場合は大光(たいこう)と呼ぶとあります。金星が昼間に見えた時は争明(そうめい)と呼ばれ、戦争が起こることの予兆とされました。いずれにしても区別が大変ですね。

 日本でも色々ありますが、面白いのは沖縄での名前で、宵の明星をユウバナマンジャーブシ(夕飯をほしがっている星)というそうです。楽しい名前ですね。

※4月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。