集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第199夜「惑星と恒星とスターストリーム」(2015年4月17日号)



 今晩や明晩は、ほぼ新月なので、宵空には月がありません。なので、身も心も星見(キザに英語で申し上げるとスター・ウォッチング)で、お楽しみください。あいにく天の川は、宵空では西に低いので、明け方3時頃、東の空でお楽しみください。ただし、光害溢れる都会ではダメですよ。

 宵空には、2個の明るい惑星が見えます。「宵の明星」金星と「夜中の明星」木星です。木星は、ただし夜中になると西空に低くなりますので、今は第二宵の明星と申し上げておきましょう。木星が金星の約6分の1の明るさだからです。

 ところで、なぜ惑星というのでしょう。それは、恒星の間(星座の中)を、月日の流れの中であちこちフラフラするからです。もちろんそれらがお酒に酔っているわけではありません。そして、勿論危険ドラッグを吸引したからでもありません。

 惑星はすべて太陽の周りを西→東と同方向に公転し、内側の惑星ほど高速で周回しています。外側の惑星なら地球が追い抜くとき、内側なら追い抜かれるときに、惑星は東→西と逆戻りするように見えるのです。それを「惑っている」と昔の人は見ました。惑星の英語プラネットも「さまよい歩く」という意味です。

 一方、恒星の方はどうかというと、明治時代の一戸直蔵という天文学者によれば、「恒」は位置も明るさも変わらないことを意味したそうです。この人以前は、恒星は普通は位置を変えないが、一部の高速で動く星のことを固有運動星と呼んで区別していたようです。

 今では高速度星と呼ばれる星の代表が、今頃、宵の東空に見える一等星うしかい座のアルクトウルスです。5万年後には30度以上南に離れたおとめ座の一等星スピカのそばを秒速約130kmという超スピードで通り抜けます。

 同星は、かつて銀河系に衝突吸収されたちっぽけな銀河に所属していたことが判っています。アルクトウルスストリームと呼ばれ、現在銀河系の中には10個のスターストリームが見つかっています。凄い話ですね。

※4月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。