集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第198夜「百獣の王ライオン」(2015年4月10日号)



 今頃の一番星は、日の入り約30分後までに西空に見え始める金色の金星です。二番星は約40分後までに頭上に見え始める枯れ葉色の木星です。三番星は惑星ではなく、南西の空に見えてくる白い恒星おおいぬ座のシリウスです。その後暗くなるにつれて、四番星以降はワッと増えてきます。うしかい座の橙色のアルクトウルス、おとめ座の純白のスピカなどなど、いずれも一等星です。

 ところでしし座のレグルスという一等星をご存じですか。たぶん、知らないとおっしゃる方が多いことでしょう。なぜかというと、一等星中最も暗い星だからです。とはいえ、レグルスとは「小さな王様」というりっぱな名前です。

 獅子は申し上げるまでもなく百獣の王ライオンのこと。だからレグルス=小さな王様なのでしょうか? ですが、ものの由来はそう単純ではないようです。暦が絡んでいるからです。今から4000年も昔のこと。その頃、夏至の頃に太陽がしし座にいました。小難しく言うと、夏至点がレグルスの近く(計算上は紀元前2331年2月17日レグルスから0度21分南)にあったのです。このため、頭上から日光が長時間照りつけ、暑さの盛りになりました。

 他の季節に夜空を見ると、その場所には全くライオンを横から見たような姿の星座があり、バビロニア(今のイラク)国などでは堂々たる王権の象徴として、そこにしし座が当てはめられたわけです。ライオンという言葉の元の意味は「力強い」だそうです。また、梵語ではシンハと呼ばれ、その首音からシが取られて、更に中国ではそれに獅の字が当てられました。獅子の子は接尾語です。

 また獅の字の中の「師」がウシ(大人)の略だそうで敬語です(その事は日本語で○×氏という敬語に残されています)。これもまたライオンが百獣の王だったからと見られています。

 そういわれて空を見上げてみると、しし座ってエジプトのスフィンクスに似ていますね。

※4月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。