集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

目次

第204夜「織女星と太陽との奇妙な関係」(2015年5月22日号)



 今晩夜10時を回る頃、図上には北斗七星や春の大曲線(柄杓の柄~アルクトウルス~スピカ~帆かけ星)など、春の星空を飾るスターたちが勢揃いしています。一方、東の空には夏の大三角の大スターたちが出番を待っています。

 その中で先陣を切って地平線上に登場し、ひときわ明るく輝く星、…何しろ第二位のアルタイルこと、わし座の輝星牽牛星の2倍、第三位のデネブ(はくちょう座)の3倍で光っています…、それこそがサマー・ダイヤモンドこと、こと座の輝星ヴェガ、というより日本では誰もが知る織女星です。現在太陽から25光年の位置にあります。

 ところで、太陽が織女星の北極星(または南極星)だということを、みなさんご存じでしたか。あいにく現在のところ、織女星の自転方向が不明なので、北極星か南極星かは判っていませんが、太陽がその極軸方向にあることは確かなようです。

 残念ながら、織女星は誕生してから2億年しか経っていないので、人類のような高等動物はいないと思われていますが、もし地球のような岩石惑星があって、人が立てる場所があれば、「あれが懐かしい太陽だ」とみんなが思うでしょうね。ただし、織女星から見た太陽はたったの4等星。地球から見た北極星が2等星ですから、容易には探せません。

 ところで、今から50万年後には、太陽は太陽系の星々を引き連れて、今織女星がいる辺りに移動しているはずです。ただしそのとき織女星はそこにいませんが・・・。

 実は今から29万年後、織女星は太陽に(あるいは太陽が織女星に)17.2光年まで最接近し、-0.8等(現在は0.0等)で輝くはずです。つまり2倍近く明るくなって見えるはずです。ですが、今から数百万年前と数百万年後には、共に肉眼では見えなくなるそうです。そう考えてみると、今晩見えている星空は、以前とも以後とも決して同じではないのです。貴重ですね。

※5月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。