第218夜「プラネタリウムに行きませんか?」(2015年8月28日号)
「今頃なら宵の口、西空低くに土星が見えるよ。昔と違って現代は大気圏外にいる宇宙望遠鏡で撮影されたシャープな姿や、土星探査機で間近から見る映像が素晴らしいよ、だから今日はプラネタリウムでデートしようよ。たくさんの星の話を、僕と一生に聴かないか?」という台詞は、昔からデートに誘う殺し文句でした。
ですが、この言い方には間違いがあります。みなさんお判りになりました?
土星が見える位置や姿、プラネタリウムでたくさんの星の話が聞ける(今はオート番組が主流で解説員の話を直接聞くチャンスは大幅に減りましたが)ことではありません。正解は、プラネタリウムには「行けない」ことです。
プラネタリウムは、それを発明した会社がドイツにあったので、ドイツ語の表現プラネタリウム又はプラネテマシンが正解です。つまり惑星投影機のこと。だから、みなさん方が「プラネタリウムに行く」ことは、不可能。だって、ドーム中央に鎮座する投影機に乗らなければなりませんから。でも本当はそこが特等席です。
なぜかと言えば、そこが一番映像で映し出される空の歪みが少なく、本当の星空(の姿)に近いところだからです。でも、実際は危なくて落っこちそうですし、第一星空にみなさんの妖しい影が・・・。とても落ち着けそうにはありません。
でもね、やっぱり大都会ではオアシスで、そんなに涼しくて暗闇を楽しめる場所は、草々見つかりません。お化け屋敷は別として! たまにはお知り合いと一緒に、宇宙に思いをはせてみるのも、オツなものです。お休みになっているおじさんの相当な音量のいびきに悩まされることは、不幸にしてあるかも知れませんが。
ここしばらくは月が明るく、本当の夜空では星が余計に見えにくいですが、プラネタリウムでは解説の邪魔をする月明かりを消してくれるかも知れませんよ。
※8月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。