第219夜「明け六つ・暮れ六つっていつですか?」(2015年9月4日号)
昔、江戸城では大奥に働く女性達が出かけたり帰ってきたりする時刻が厳密に決められていました。なぜかというと、保安上、城門が決まった時刻に明け閉めされていたからです。つまり、周辺が暗い時刻では、城門は閉じられていました。だから、江戸城周辺では、大奥の女性達がその頃城門近くを全速で走っていたそうです。間に合わなければ、閉め出されてしまうからです。
町の長屋にもそこかしこに門があり、それも暗い時刻帯には閉じられていました。当然現代のように夜遊びなんて、普通はできなかったのですね。
その時刻が明け六つ、暮れ六つでした。あくまでも不定時法で、現代のような定時法ではなく、つまり午前6時とか午後6時ではなかったのですよ。だって、午前6時にはまだ真っ暗な季節がありますし、午後6時ではまだ相当明るい時期もあるからでした。
その決め方たるや、明るい星がパラパラと見え、手の大きな筋はかなり見えるが、細かい筋が見えなくなった時、というものです。規則として決まっていたそうです。でもこれって、ある意味では合理的ではないでしょうか。
地方によって異なりますが、例えば東京で今頃ならそれは18時40分頃でしょうか。西空にアルクトウルス、南西空に土星、天頂付近にベガ、南東空にアルタイル、北東空にデネブと言ったところですね。パラパラは5個くらいです。今頃は月が夜半及びそれ以降に上ってくるだけですから、夕方はどんどん暗くなっていきます。
どうですか、手の筋がいつまで見えるか、街灯や街明かりがない場所で実験してみませんか。かなりビミョーな実験ですよ。でも、その際の夜空の変化は、劇的なことがお判り戴けるはずです。
ところで、ギリシャ・ローマ時代のヨーロッパでは、日の変わり目が日出でも真夜中でもなく日没でした。なので、クリスマスは24日の日没から翌日25日の日没まででした。
※9月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。