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あつぼし見上げて夜話

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第220夜「古代ギリシャの宇宙観」(2015年9月11日号)



 13日は新月です。当日今年2回目の日食が起こります。一回目は3月20日の皆既日食でしたが、北大西洋でしか見ることができませんでした。今回は南極の昭和基地で7割3分欠ける部分日食です。南アフリカのケープタウンでも見られますが4割2分が最大です。

 どちらにしても日本では全く見ることはできません。でも、新月ですから、一晩中月明かりの邪魔はなく、理想的な暗黒が見られます。で、突然ですが地獄は暗黒でしょうか?そしてどれほど遠くにあるのでしょうか。だいたい天国もどのくらいの距離にあるのでしょうか。もしかすると、どちらもそれほど遠くないのかも知れません。

 例えば古代ギリシャの人は、ウラノスと呼ばれた天からガイアと呼ばれる地、そしてタルタロスと呼ばれた冥界までは、それぞれ距離が等しいと考えていました。天から地まで落下するのに10日間、冥界まで落下するのに10日間しか必要でなかったそうです。

 地球から宇宙に脱出することができる速度は、最低秒速11.2kmですから、それで行くと10日で968万km飛びます。天までも冥界までのその距離、月までの25倍強しかなく、太陽までの1/15.5しかない計算になります。近いでしょう!

 でも、古代ギリシャの人々が科学的でなかったのではありません。現代の神話学者の見解では、ギリシャ神話宇宙像の特質は大地と天は円形で、宇宙の創造神はいなかったなど、科学的幾何学的宇宙像を持っていたそうです。だからこそ天や冥界までの距離なのです。

 ギリシャ神話は星座の原点で、およそ科学的ではないように見られがちですが、そうではないのですね。日本は雨が多く、このため樹木もたくさん育つ反面、天候の変動が激しくて星が見えず、古代人達が宇宙に思いを巡らすことは少なかったのではないかと私は思います。月明かりが邪魔しない夜、みなさんもあの星までの距離とか宇宙の形とかに、思いをはせてみませんか。

※9月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。