集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第225夜「火星と木星と金星のレース」(2015年10月16日号)



 惑星は、それぞれの速度で別々のトラック上を運動しています。そのため、地球から見ていると外側にある惑星を内側の惑星、例えば火星が木星を追い抜くことがあります。

 10月18日にそれが起こります。その日の明け方、東の空をご覧ください。高いところに明けの明星金星が見え(晴れてさえいれば日本国内どこでも誰にでも見えます)、その斜め左下(約6度半)に、金星より大分暗いですが、どなたにも見える木星が輝いています。

 その木星の左側(北側)をよーくご覧ください。よーくご覧にならないと、見えないかも知れません。火星なのですが、木星に較べて3等級も暗いことと、接近しすぎているからです。なにしろその接近角度たるや、満月の直径(約0.5度)より小さい(約0.4度)からです。

 満月って、みなさんはお盆のようなお月様と言って、大きな円いお盆のように思っておられる様ですが、お盆の季節に見る満月を盆の月というのです。

 またそれは目の錯覚でもあります。月が上ったばかりの時は大きく見えますが、真上にあるときに見ると小さく見えます。月の錯視と言って、専門書一冊が書かれてしまうほどのことなのです。五円玉を指に挟み、腕をグイッと伸ばしたとき、五円玉の穴の見掛けの直径が約0.5.度なので、満月も、この朝の木星と火星もスッポリ入りますよ。

 ともかくそのときの火星は見づらくはあっても、黄色い木星と違ってたいへん赤いですから、すぐ判るでしょう。前日も翌日も色は変わらないので、この接近をぜひご覧ください。可能ならば、双眼鏡や望遠鏡でご覧になるのをお勧めします。

 火星はその後どんどん木星から離れ、一週間後には2度半も下に行ってしまいますが、26日明け方には、金星が木星に約1度まで接近し、その後金星も下に離れていきます。何だか天空で追いつ追われつのレースを見ているようですよ!

※10月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。