第242夜「月と地球はいつ出来たのでしょう」(2016年2月12日号)
この頃東日本での日の入りは、夕方5時半頃ですから、7時頃にはとっぷりと暮れて星が良く見え始めます。中心に三つ星があるオリオン座やスバルがあるおうし座も良く見えるでしょう。
12日の宵空には、月齢4の月(普通なら三日月と呼ばれます)が懸かっています。月の東側(左側)部分が暗いけれど見えていることも判るはずです。地球照と言って、地球(主に雲)の照り返し(日光の)が月に当たってぼんやりと光っています。そう説明した初めての人があのレオナルド・ダ・ヴィンチです。
突然で恐縮ですが、今は38万km以上離れたところにある月が、恐らく数百万から1000万年間隔で数回発生した原始地球への天体の衝突(その推定されるサイズから大隕石というより天体と言うべきでしょう)、そして最後はジャイアント・インパクトと呼ばれるにふさわしい大きさ(多分火星程度)の天体が地球の脇腹を掠めた時に、粉砕物が地球の周囲にばらまかれ、一時的に地球を取り巻いたのち、たった100日前後で出来た塊が、のちに月になったという説です。
衝突した天体には(誰も見たことがありませんが)Theiaという名前が提案されています。最新の学説では、衝突発生が45.3億年前で、その直後地球と月は冷えて固化したと見られますから、地球も月もその形成は約45億年前ということになりますね。
そんな凄いことが、かつて起こったなんていうことが、今晩見える月から想像できますか。でも、月に見える黒い模様の中にその秘密が隠されていたし、それを解明した天文学の力って、どうです、凄いものだとお思いになりませんか?
いえいえ、もっと凄いことが今から138億年前に起こりました。みなさんよーくご存じのビッグバンとインフレーションですね。それに較べれば、地球上で起こっている種々なことなんて小さい小さい。みなさんも宇宙の疑問を一つ一つ解き明かしてみませんか。
※2月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。