第243夜「北斗七星」(2016年2月19日号)
ここ数日は、毎晩月明かりがきつく、星が疎らにしか見えませんが、それでも午後9時には東空に上ってくる木星はもちろん、北東空にまっすぐ立って見えているフライパンは、二等星ばかりですが何とか見えるでしょう。
それは勿論「北斗七星」のこと。でも柄杓ですよと案内してもサッパリの子どもには、私はフランスでの名称ソースパン、フライパンと言うと、お母さんを含めて、判ってもらえます。
そういえば、静岡県伊東市では、じょうろというのだそうです。ナルホド。でも星の文人・野尻抱影先生に言わせてみれば(ただし故人)、日本で最古の北斗七星の名前は四三の星(しそうのほし)だそうです。ばくち打ちの人ならすぐピンと来るでしょう。サイコロの目のことで、丁と半を意味します。
また卍(まんじ)という、文字というか記号というか、が北斗七星の日周運動(北極星周りの動き)起源であるという説もあります。ただし、卍が何を意味しているかという説はそれことゴマンとあり、議論百出の話です。生殖の象徴説から章魚という魚の足に似ているという説まで、中には雷に似ていると言う説もあります。
北極星を中心として9人の女性が回すハンドルと見るチュートン民族の見方もあり、旧約聖書中に登場するダビデ王が死んだとき、亡骸を運んだ車をのちに神様が天に運んだというフランスの民話もあります。隣のドイツでは、カール大帝の車とか聖人を運ぶ車、そして、有名なミザール二重星の片方の星アルコルを車の馭者と見る見方もあります。中国では斗を帝車と見ているし、シベリアでは赤鹿を追いかける七人の長老と見ています。
千変万化、民族によって北斗七星は実に様々に見られているのですね。いかがですか、みなさんも北斗七星とその動きをじっくり見て、お話を創ってみませんか。ですが、恒星には固有運動というものがあり、北斗の両端の二星は中の五星と全く反対方向に運動しているので、数十万年後には別の形になってしまうのです。お話創りはお早めに。
※2月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。