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あつぼし見上げて夜話

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第244夜「雛祭りはいつでしょう」(2016年2月26日号)



 今年の雛祭りはいつですか?などと伺うのは、失礼かも知れませんが、多分ご存じ無いでしょう。正解は4月9日です。えぇ!3月3日じゃないの?正しい雛祭りは三月三日です。でも3月3日ではありません。旧暦の三月三日です。じつは明治6年以降おかしくなってしまったのです。

 旧暦ならば、三月は桃の節句です。でも(太陽暦)で3月は桃は熟していません。だから太陽暦では4月に桃の節句が行われなければならないのですが、実は桃が熟すとか熟さないに拘わらず、古代日本で旧暦三月の初めには、物忌み行事が行なわれました。その際行われる禊ぎ後に、穢れを祓う儀式が行われていました。そして、紙人形を作ってその穢れを移し、水に流したのです。特に平安時代の貴族社会では、女子の厄除けと健康祈願の行事として行われ、江戸時代になって五節句の一つに制定されました。

 一方古代中国でも、三月三日を重三(ちょうさん)又は上巳(じょうし:三月最初の巳の日)に水辺でお祓(はら)いをする風習がありました。その際、河原で飲食や詩作を楽しんだそうです。その風習が日本に伝わり、桓武(かんむ)天皇は、延暦十一年(792年)三月に、それを執り行ったと言うことが『類聚(るいじゅ)国史』に記されています。

 この際多少歴史を紐解けば、その後平安時代にかけて、天皇が陰陽寮から提出された人形(ひとがた)を手で撫でた後、河原でお祓いし、水に流すという行事が実施されました。

 その後、一般社会でも行われるようになりましたが、やがて人形がオモチャ化して、古い人形が捨てられなくなると共に昔の意味合いが忘れられ、室町時代以降は三月三日に雛人形を飾り付けるようになったそうです。ただし、現代でも一部の地域には雛流し(流し雛)や古い雛を送る行事として、面影が残っています。3月と4月の宵空で異なるのは、後者では冬の一等星が西空低くに傾いており、冬と春がはっきりと入れ替わっていることです。

※2月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。