第245夜「太陽が欠けます」(2016年3月4日号)
メチャクチャたくさんある天文現象の中でも、誰もがご存じの現象で誰もがタダで見られる(ちょっと注意が必要ですが)最も印象的な(人によっては怖れる)現象が、日食です。9日水曜日の昼前に、日食メガネさえあれば、といっても太陽が月に隠される率が日本では僅かなので(つまり部分日食)、当日インドネシアで(晴天ならば)見られるはずの皆既日食(食分1。皆既時間中なら裸眼で見られます)とは違って、日食メガネ越しでも相当眩しいでしょう。だから、見続けては眼を痛めます。
東京では、一番かける(食分0.26)のが11時8分過ぎ、東京より7度半北に位置する札幌(食分0.13)では11時18分ちょっと過ぎです。このように、日食は起こる時間も違えば、かけ方も異なります。
例えばインドネシア・スマトラ島のパレンバン市(食分1.01)では同日8時22分ちょっと前に皆既になりますが、同じインドネシアでも更に南に位置するジャワ島の首都ジャカルタ(食分0.91)では、最も欠ける7時21分でも9割しか欠けない部分日食で終わります。チョットの場所の違いで大違いなのですね。
この時期インドネシアは雨が多いと言われ、お天気が心配ですが、だからといって行く行かないは大違い、どころかお金と時間が許すならば、言ってご覧になるのは如何ですか。すると、暗くなるので鳥たちが誤ってねぐらに帰り始めるとか、鶏がコケコッコーと無き騒ぐとか、螢が飛んで光を出すとか、いろんな事が観察できます。面白いですよ。
もし、どうしても日本で皆既日食が見たいと思われる方は、2035年9月2日までお待ち下さい。水戸でその日10時10分にご覧になれます。宇都宮なら10時8分半に、前橋なら10時7分に同じく楽しめます。
私のような老人にはきついですが、若いみなさんならきっと大丈夫でしょう。天文には夢があることがお判り戴けますでしょう!
※3月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。