第58夜「星空は廻る」(2012年8月3日号)
皆さんは教科書や星の本などで、北極星の周りを同心円状に円を描く星空の写真を、ご覧になったことありませんか? そしてその写真に添えられた文で、「カメラを北向きに固定して、シャッターを切りっぱなしにしておくと、このように写ります」と説明されていませんでしたか?
私も、今から45年以上前に天体写真撮影に夢中になった学生時代、月が昇っている時間帯だけは外して―そうしないと月明かりで背景の空が明るくなり(俗にかぶるという)暗い星が画面の中でつぶれて(消えて)しまうからですが―レンズの焦点距離やフィルムの感度も良く考えて、何時間もシャッターを切りっぱなしにして露出したものでした。
ですが、白黒フィルムで撮影すると、どの星がどれかが分からなくなって、今度は値段が当時とんでもなく高かったカラー・スライド用フィルムを使わなければならないなと思ったものです。
閑話休題。今回お話ししたかったのは天体写真のことではありません。星空が廻っていることでもありません。地球が廻っていることです。なぜ地球が廻るのか不思議だな、と思われたことはありませんか? それも決して止まることなく、1万分の1秒くらいのほんのちょっとだけ1日の長さを変えますが、いつまでも地球が廻り続けるように見えます。
ですが、じつはそうではありません。今から6億年くらい前の珊瑚の化石から、当時1日が5時間くらいしか無かったことがわかっています。月がずっと地球近くにいたからです。現在も月は1年で3.8cmくらいづつ離れていきます。そのため、少しずつ地球の自転の速度はおちて、今から数十億年後には、地球の1日が1年の長さになります。大変なことですね。
星の動きを見ていると、悠久で止めどない時間の流れを感じることが出来ます。星空を見ることって、おもしろいですよ。
※8月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。