第60夜「北極星を見つけよう2」(2012年8月17日号)
第57回の7月27日号で、今月は2日と31日に満月になり、これを俗称でブルームーンということをお話しましたが、新月は18日つまり明日一回だけです。ですが、満月から次の満月までと、新月から次の新月までの期間は、どちらもほぼ29日半ですから、いずれは新月も1か月に2回あることになるはずです。調べてみると、ありました。再来年1月と3月で、両月とも1日と31日に新月になります。おもしろいことに、間の2月には起こりません。28日しかないからです。
でも、ブルームーンは満月だけに言われるもので、新月にその名はありません。もちろん見えないからですね。
従って、18日前後数日間は月明かりに邪魔されず、街明かりがない場所ならゆっくりと天の川を楽しむことができます。“イルミネーションで癒し”が流行っていますが、“天の川で癒し”が流行らないのは、なぜでしょうか。
でも今晩は、天の川ではなく北極星を楽しみましょう。実は北極星がさほど明るい星ではなく(2等星)、街明かりがひどい場所で、白い北極星は非常に見えにくいからです。そのため多くの子供たちが北極星を見たことがないというのが、日本の現状です。
世界の至る所で北極星はよく知られています。例えばモンゴルでは、アルトン・ガドサ(黄金の鋲)といって、ここだけが空に刺さった鋲の役目をするというのです。まったくこの星をほぼ中心として、空が回転している様子をよく表現しているではありませんか。
一方、イスラム教の人々は砂漠を旅することが多かったためでしょう、北極星を見つけることがとても重要でした。なぜなら、毎日何回も聖地メッカに向かって礼拝しなければならず、そのために正確に方向を知る必要があったからです。恵方巻どころではないですよ。磁石ではだめです。地磁気の北極方向は東京でも7度西にずれているからです。しかもこれからさらに西にずれていくはずですので。
※8月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。