第74夜「金星と土星」(2012年11月23日号)
今年の七夕、つまり7月7日の明け方(日の出1時間ほど前)、日本の大部分ではあまり天気に恵まれませんでしたが、惑星の2大チャンピオン、明るさで金星と、サイズで木星とが東空で縦に5度半離れ、木星の上に7度離れてすばるが並ぶ美しい姿が見えました。
来週27日明け方、金星と土星とが横にたった0度半しか離れず、寄り添うように見えます。前日の26日では金星の斜め左下1度半に、翌日28日では同じく金星の真上約1度に土星が見えます。でもこの説明では、土星が速く動いているように聞こえますが、実は金星の方が大きく移動しているのです。
たったの0度半というと、小型の望遠鏡で低倍率で見れば、同じ視野内に見えるほどです。珍しいですよ。といっても2016年1月9日にも2024年8月22日にも、そして2030年6月25日にも、それぞれかなり接近して見えますが・・・。いずれの場合も金星の動きが速く、たった1日のランデブーで、どちらの星も惑星であることが実感できるはずです。
土星は木星とは異なり、小型の望遠鏡では本体はあまり大きくは見えず、またその縞模様も大変淡くしか見えませんが、なんと言ってもその環の見事さには圧倒されます。不思議と言えばよいの、かかっこいいと言えばよいのか、太陽系一番の見物ですね。
「月のクレーター」と「土星の環」と「ほうき星(彗星)」を三種の神器といい、これらを見るとみなさんは必ず星のトリコになると言われます。私も半世紀以上前に、トリコになって、その後“天文病”という恐ろしい病気になりました。
今土星を見ると、実にかっこよく見えます。環の上と下に土星本体が顔を出し、いわゆる土星らしい土星です。ところがあと3~4年するとかっこわるい土星になり、2019年まで続きます。かっこわるいピークは2016~17年、まるでお皿にのったアイスのようです。地球から見ると、お皿(環)の相当斜め上からのぞき込む角度になるためためです。かっこわるいけど、これはこれで、なかなかおもしろい見え方ともいえます。
※11月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。