第75夜「今度は木星と水星」(2012年11月30日号)
先週は、金星と土星についてお話いたしましたが、今週は木星と水星です。今回の話は木星と水星の接近についてではありません。なにしろ現在、木星と水星は角度にして約160度も離れているからです。
何のお話かというと、①来月3日に太陽・地球・木星が直線状に並ぶ、専門用語で申し上げれば「衝」という状態になること、②その2日後の5日に地球から見て水星が太陽の西側に一番離れる、これも専門用語で言えば「西方最大離角」になることです。
太陽系の内側コースを行く地球は、大きく回らねばならない外側の木星を追い越します。有利ですね。おまけに木星に較べて地球の方が木星よりスピードが速いので、確実に追い越してしまいます。
でも大切なことは追い越すこと自体でなく、そのとき両者が最接近して木星が大きく見えることです。そしてこのとき木星が太陽とは正反対方向にいるので、他の時期とは違って、夜中を挟み夕方から明け方までの長時間、ゆっくり拝見できることです。だから、木星観望者には絶好のチャンスなのです。
一方水星はと言うと、普段太陽から余り離れないので、観望チャンスがごく少なく、緯度が低くて恵まれている日本でも、年間20日くらいと言われています。ポーランドという高緯度地域で活動していたコペルニクスや中緯度のイタリアのガリレオも、生涯一度も水星をまともに見たことがなかったそうです。
今回、西方最大離角になる5日の日の出の頃、東京で高度18度、仙台で17度半くらいになりますから、小型双眼鏡で金星の斜め左下7度(同一視野に入る?)ところを探してください。あなたもコペルニクスやガリレオを超えることができるかも知れません。
ただし、空が明るくなると、金星は見えていても水星が見えにくくなるので、日の出の1時間くらい前から準備を開始してください。天候が安定する今は絶好のチャンスです。
※11月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。
プロフィール:金井三男(かないみつお)さん
もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。
「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。