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あつぼし見上げて夜話

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第78夜「小さい満月」(2012年12月21日号)



 来週24日はクリスマス・イブ。街にはラウドスピーカーから毎年の通り、クリスマスソングが賑やかに流れています。今から2000年以上前、ユダヤの国ベツレヘムの馬小屋周辺では、真夜中にもっと静かに人々が集い、赤子の誕生を祝っていたことでしょう、とはとても想像できませんね、この喧噪下では。
 本当のクリスマスは、12月24日イブの真夜中です。イブを良く前夜祭と言いますが、イブはイーブニングに通じ、当時のユダヤでは日没を以て、その日が始まりました。つまり、隊商の人々をはじめ、中近東の多くの人々は、日中休んでいたからです。夜の訪れと共に一日が始まったのです。
 後世ローマでキリスト教が弾圧されていた時代、支配者の宗教だったミトラ教の主神(太陽神ミトラ)の復活(太陽神の復活にまことにふさわしい)を祝う冬至(当時12月25日だった)祭の喧噪に乗じて、普段お祝いなど不可能だったキリストの誕生日を、救世主の誕生日にふさわしいこの日にしようと、人々は密かに決めたのです。
 従って、クリスマスは12月ではなく、3月説やら9月説もあります。こんな寒い時期に羊飼いが野宿しているなんて、ちょっと考えにくいですから・・・。
 キリスト教会では、前日まで待降節と呼んで静かに祈りその日の到来を待ち、当日から降誕節と名前を替えて誕生を祝ったのです。真夜中に生まれたキリストの誕生日は、昔の暦なら24日の真夜中、今の暦なら12月25日の0時ということになりそうです。
 来週28日の満月より三日前の25日に、やや左側が欠けた月を見ると、小さいなぁと感じるでしょう。先月の満月よりはちょっと大きくなりますが、今年5月なスーパームーンと騒がれたときの88%しかありません。マイナームーンとでも言いましょうか。大きさが変化する理由は、もちろん月までの距離が変わることですね。

※12月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。