集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第92夜「土星が東に、木星は西に」(2013年3月29日号)



 春分を過ぎ、いよいよ日が長くなってきました。春ですね。私が住む東京では29日の日没が18時ジャストです。これから毎日日没が約1分遅れ、日出が約1分早まり、合計2分余りずつ昼間が伸びていきます。

 29日の夜間(日没~日出)が11時間31分ですから、ゆっくりと星を見ていられる真っ暗な夜(つまり薄明時間は除いて)は、そのうち9時間弱しかありません。夜が最も長い冬至の頃、11時間半もあったのに、ですね。でも、星を見るのにシーズンオフはありません。だって毎晩星空は変わっているのですから。

 たとえば、今晩21時頃夜空を見上げてください。満月過ぎの明るい月がありますが、一等星であふれかえっていますね。西から東へ、アルデバラン・リゲル・ベテルギウス・カペラ・シリウス・プロキオン・ポルックス・レグルス・アルクトウルス・スピカと10個もありますよ。

 あれっ、もう二つありますね。しかも西空にあるのはとても明るいもの。そうです、木の葉(枯れ葉)色の木星です。東空にあるのは、ちょっと暗い土色の土星です。

 与謝野蕪村さんの有名な「菜の花や、月は東に、日は西に」は、菜の花畑でたいへん有名な兵庫県六甲山系の摩耶山で、江戸時代のちょうど今頃の季節に歌われたものとされていますが、「菜の花や、土星が東に、木星は西に」は詠み人知らず、です。字余りの駄作!

 ですが、木星も土星も惑星ですから、太陽や月と同様に、毎日場所を変えていきます。ただ、太陽が1年、月は1か月弱で星空を一周するのに較べて、木星は12年、土星は30年もかかりますから、木星と土星が互いに接近するには、およそ20年の時間が必要です。

 2020年12月22日未明が次回の接近。その時刻では日本で見られませんが、前日夕方南西空低く、たったの0.1度間隔で土星の南に木星がいるはずです。お楽しみに!

※3月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。