集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第91夜「パンスターズ彗星を見ましたか?」(2013年3月22日号)



 パンスターズ彗星が話題になっています。太陽まで4500万kmまで近づき、当初はマイナス1等くらいまで明るくなると予報されていましたが、最大でもどうやら0~1等程度にとどまったようで、ちょっと残念です。

 日没30分後といえば、まだ空全体明るく、ボワッと大きな彗星を見ることは、かなり難儀です。北北西の方角に高度10度と低く、春特有の霞みがかった空では、せっかく延びた尾の姿も、双眼鏡でないとなかなか確認が難しい状況です。

 ただし、彗星の位置予報はきわめて正確なのですが、光度予想は気まぐれで、肉眼では認めにくいほど暗い場合もあれば、ハッとするほど明るくなる場合もあります。おまけに急にそれを変える場合もあり、変光星の観測をライフワークにしている私も苦労します。

  パンスターズ彗星は、予想より少し暗めでしたが、そのどうなるかわからない未知の魅力が、彗星観察の楽しさともいえましょう。彗星を特徴付けるその尾も、予想に反して見えにくい場合や、見事に長く伸びる場合もあって予報は難しく、まさに魔法使いのおばあさんが乗っているように振る舞います。

 頭部はまるくボゥーと輝き、尾が二本見える(昔記録されたある彗星は尾が6本も見えた)ことがあり、片方のチリの尾(しなって見えることが多い)も、もう片方のイオン(ガス)の尾(ほぼ直線状で太陽とは正反対方向に伸びる)も、それらが、さまざまに変化して見えるさまは、他の天体にはない面白みがあります。

 昔の人は彗星を星孛(せいはい)や孛彗(はいすい)と呼び、特に尾が短い彗星を孛星(はいせい)と呼んでいました。孛は目が眩むという意味の漢字です。

 パンスターズ彗星は、目が眩むほどの明るさにはなりませんでしたが、まだ諦めないでください。今年は彗星の当たり年で、11月末から12月初旬に、今年の大本命と言われているアイソン彗星が、昼間の青空中でも見えるかも知れないからです。

※3月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。