集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第10夜「小惑星ベスタが観測にベスト?」(2011年9月2日号)



 私は、洒落が好きです。プラネタリウム投影中「妖女メドゥサの顔を見ると大人はイシになり子供はジャリになる」とか「王妃カシオペヤの生業は貸しお部屋業」とか「牛飼いが大熊を発見してオォ!クマだと叫んだ」とか「ヘルクレスはライオンを見つけてシッシッと云った」とか、ともかく洒落を連発して、お客様から「落語を聞きに来たんじゃない」とお叱りを受けたことも数知れず。

 でも、星の愉しみ方は星の数以上にあるものだ、と何処吹く風、シャァシャァとしていました。そんな私ですから、今回は「小惑星ベスタ(正しい表記はヴェスタ)が観測にベスト?」とタイトルをつけてみました。ベスタとベスト、発音でも表記でも違います。でも日本人はVとBの発音の違いが苦手ですから、プラネタリウムの投影では、洒落に聞こえます。正しくはVestaとBestですね。

 小惑星ベスタは、直径500kmほどしかない、名前の通り小さな惑星です。外国では、マイナー・プラネットとかアステロイド(小さな天体)と呼ばれています。

 体が小さいので、地球からちょっと離れている普段の状態では(太陽からも離れるので)、望遠鏡でしか見ることが出来ない8等級の暗い天体ですが、それが先月初め地球近くに来たために、明るく見えるようになりました。夜空が綺麗で透明な、そして月明かりが邪魔しない暗い時なら、眼がよい人では何とか見える明るさ(5.6等)になりました。ただし、その位置はやぎ座にあって、南天であまり高く昇らない星座ですから、一番高くなる南中時(23時頃)でも、見やすいと云うほどではありません。

 ご覧にならなかったみなさんには残念でしたが、もしも望遠鏡がご利用できるなら、幸いなことに月が早めに沈み月明かりの影響が少ない今月初めなら、ベスタ…じゃないベストとは行きませんが、6等代半ばでまだ観望チャンスです。NASAの小惑星探査機ドーンが今年2月に、ドーンと探査したばかりですから、今年の話題にもなりますね。

※9月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。