集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第11夜「お月見」(2011年9月9日号)



 今年も中秋の名月(お月見の日)がやってきました。旧暦の八月十五夜(今年は9月12日)、満月です。当日当夜、もしみなさんが月から地球を見たとしたら、夜の地球は月明かりでうっすら明るく見えるはずです。月光の威力は、別に狼男や魔女の話ではありませんが、偉大です。満月の明かりの下では、新聞がかろうじてですが、読めるほどですから。

 今年のお月見は、ちょっと珍しいことがあります。実は当日18時27分が正しく満月になるからです。「えッ? 十五夜のお月見は必ず満月じゃないの?」と、いぶかしく思われる方も多いかも知れません。でも、違います。

 お月見は新月から十四日目の月です。昔の暦では、新月になる日(朔日)を毎月一日(月が西の空に初めて見える、つまり月が西の空に立つ、ツキタツからツイタチになった)としましたから、十四日目が毎月十五日です。

 新月から満月までは平均14.77日ですが、軌道運動の遅速の関係で15日を超えることもあります。なので、満月になるのが年によって旧暦の十四日~十六日の間を移動します。少しばかり欠け気味の中秋の名月もあるわけです。今年のそれは夕方満月になるので、まん丸な中秋の名月が見えるはずです。

 昔から私たちのご先祖さまは、この季節、豊作を感謝して、満ちた月の下で供え物を整え、しばしの間お月見を楽しみました。その中で、月に餅つきウサギを見ました。

 ところで、以前から一つ気になっていることがあります。お店で売られているお月見団子やお菓子の包装紙、あるいは絵葉書や手ぬぐいなどに、ウサギのデザインが画かれていますが、ほとんど白ウサギになっています。ですが、中秋頃の野ウサギは夏型なので黒ウサギのはず…、冬型の白ウサギではありません。

 もし、月にウサギを見つけようとしても、白ウサギでは絶対に発見できません。ガリレオが海と命名した、月面の暗い部分をウサギとウスに見たてるのですから。

※9月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。