集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第88夜「北斗七星が見頃です」(2013年3月1日号)



 宵空では、木星が少し西空に傾き始めて、輝きこそ変わりませんが、ややシーズンオフ。しばらくの間は、落ち着いた夜空が楽しめそうです。幸い今年3月の始めは、夕方だけ月明かりが邪魔しますが、夜更けには月は沈み、春霞みや黄砂さえなければ、満天(満点)の星空を眺めることができるでしょう。

 そうすれば、2等半のそれほど目立つ明るさではない北極星も、その北極星を探し出すための星群(「アステリズム」といいます)として有名な北斗七星も、よく見えるはずです。そして、目の良い方なら、ひしゃくの柄の先から二番目の星が、二個に分かれて見えるでしょう。

 むかしアラビアで徴兵検査の際に視力検査の星として使われていたことで有名なミザールです。これが二つに分解できなければ、“ミエザール”になるというのは、古い駄洒落!また、伴星のアルコルが見えないと“アルコール検査”になるというのも、同様です。

 21時頃には、まだ北東の中天あたりにいますが、夜中の0時には、ひしゃくの升の先端をつくる2個の星ドゥブーエとメラクがちょうど北と南に並びます。メラクからドゥブーエに結んだ線を5倍伸ばすと北極星に達するという北極星捜索法は、かつて世界を制覇したイギリスやオランダの海軍で重宝されたと言われますが、古くから世界各地にある有名な捜索法です。日本でも、船乗りさんや漁師さんは誰もが知っていたそうです。

 北斗七星の七から七倍と記憶違いなさっておられる方が多く、もう一つの有名な北極星捜索法のカシオペヤ座の5倍と同じです。なお、北極星捜索法は、船を利用する人々には命綱ですから多数知られており、私は各種文献から13種も見つけました。

 でも、たくさん覚えるほど良いとは言えません。とりあえず、さらに夏の大三角や秋の大四辺形あるいは冬の大三角を使う方法を覚えておけば、年中いつでも北極星を見つけることができるので、十分ですね。

※3月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。