集まれ!星たち〜ひとつひとつは微かでも〜

あつぼし見上げて夜話

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第89夜「しし座?いえ、こまいぬ座です」(2013年3月8日号)



 突然ですが、星空を見るのはタダです。使うのもタダです。なので、みなさん気が向いたら、星座を創ってみませんか。すると、昔の人が結構苦労したのが判りますよ。

 小さい頃、誰でもやった遊びが、点を順番に結んでいくと、いろいろなものの姿が描けるという「隠し絵遊び」です。あれは世界共通の遊びだそうです。そしてそれが星座の起源です。だから、星座はどこででも誰にでも創作されています。

 たとえば、グリーンランドのイヌイット族の人たちは、北斗七星をトナカイに、北米中部に住むシウックス族の人々はスカンクに、東インド諸島の人々はサメに、古代エジプトの人々はラクダに見ています。

 一方、ブラジルのツカノ族とコベウラ族の人々はくじら座をジャガーに、同じくブラジルのポロロ族の人々はオリオン座をワニに見ています。印象深い形をしたみなみじゅうじ座は、アルゼンチンのモコヴィ族の人々がダチョウに、東インド諸島やブラジルでは魚のエイに見られています。このように、各地の環境や生活にあった形でそれぞれ星座が創られているのです。

 私は日本人ですから、こまいぬ座を創りました。決してしし座ではありません。だってライオンは日本に棲んでいませんもの。いや、その頭部だけで創られた樋(とい)掛け星も、日本人の傑作ではないでしょうか。ちょうど梅雨の時期に、空高くに掛かっていますから。

 世界各地で創られた星座を調べてみるのも、とても民俗学の応用問題としておもしろいですよ。でも、なによりも皆さんで星座を創ってみるのがお勧めです。

 今年も3.11が近づいてきました。あの悲しい大震災のことは忘れたくても忘れられませんが、星をつないで新しい星座を創りながら、少しでも心が前向きになれればと思います。

※3月の星空のようすは、「国立天文台ほしぞら情報」をご覧ください。


プロフィール:金井三男(かないみつお)さん

 もと天文博物館五島プラネタリウム解説員。40年近くプラネタリウムの仕事を通して、天文教育・普及に努める。変光星観測家としても知られる(食変光星アルゴル極小肉眼測定回数通算380で世界記録を更新中)。その平易な語り口と、膨大な資料渉猟に基づく天文知識の豊富さで、各種メディア・講演会などで活躍中。

 「私は学者ではありませんが、科学の普及を旨とする星の解説員として、こういうときこそ、被災者の皆様をはじめ、できるだけ多く方々に、星を見ること・調べることの楽しさをお伝えし、皆様の目が少しでも夜空に向くならば、と思ってこのキャンペーンへの参加を希望いたしました。どうぞよろしくお願いいたします」。